最近、同じオーナーが経営するパン屋を2軒訪れる機会がありました。どちらも兵庫県東部にあります。1軒目は、駅からそれほど遠くない、趣のある地区にある小さなパン屋です。ここはオーナーが2012年にオープンした最初のパン屋で、2021年に2軒目のパン屋をオープンしました。このパン屋は以前カフェだったのですが、今は廃業してしまいました。現在はカフェを併設せず、焼き菓子のみを販売しているため、以前はカフェの客席だったスペースは、今では職人が焼き菓子を作るスペースになっています。以前はカフェでカウンター席として使われていたであろう店の正面近くのスペースも、美味しい焼き菓子をお客様に提供するスペースに生まれ変わっています。


これらのパン屋は、日本で数少ない、主に身体や精神に障がいのある方を雇用しているパン屋2軒という、非常にユニークな特徴を持っています。その真の特徴は、すべての焼き菓子が100%障がいのある方によって作られているということです。現在、片方のパン屋には30名、もう片方のパン屋には10名の従業員が働いています。近年、障がい者支援のためのロボット技術が世界的に注目を集めていますが、これらのパン屋ではロボットは使用していません。焼き菓子はすべて手作業で作られています。私は、錦ボックスに入っているブール・ド・ネージュの生地を成形する作業を、少しの間見学させてもらいました。ちなみにブール・ド・ネージュとはフランス語で雪玉を意味し、まさにその名の通り、風味豊かな雪玉型のクッキーです。彼らの細部へのこだわりには本当に感銘を受けました。従業員は1シフトあたり平均500個を焼き上げるそうです。

日本では、精神障害や身体障害のある人は、単純作業に追いやられることがよくあります。会社でその作業をこなすのは、もしかしたらたった1回、あるいは何千回と続くかもしれません。しかし、これらのパン屋では、従業員全員が自分のアイデアを提案し、新しいパンを作る機会を与えられています。さらに、入社時に身につけたスキル以上のものを身につけたい人は、ここで働くプロのパン職人から学ぶことができます。これほどまでに精神障害や身体障害のある従業員を巻き込む経営者は稀です。

これらのパン屋の素晴らしさも、料理が美味しくなければ意味がありません。スタッフの皆さんの努力のおかげで、料理は本当に美味しく仕上がっています。私は食感にこだわりがあるので、この食感はまさにうってつけです。ちなみに、年間を通して販売されている焼き菓子は約15種類で、さらに日本の夏祭りなどのイベントに合わせて特別に作られ販売されているものも約10種類あります。


そして、このベーカリーのもう一つの素晴らしい点は、従業員の皆さんが最近始めた新しいアイデアです。うまくいかなかったカヌレを50%オフで販売しているのです。焦げていないので味は全く問題ありません。形が完璧にはいかなかっただけで、もちろん食べられます。職場へのお土産には向かないかもしれませんが、ご家族へのご褒美として最適です。 
この記事を締めくくるにあたり、従業員の一人に短いインタビューをお届けするのが適切かもしれません。彼は20歳で、すべてを一から学びました。学ぶ過程を楽しんでいると語り、「自分が作ったものを誰かが喜んでくれると、本当に嬉しいです」と付け加えました。この2つのパン屋が、彼をはじめとする数十人のパン屋に、自分自身のために、そして他者のために、やりがいのある仕事の機会を与えてくれたことは、本当に素晴らしいことです。